膠原病徹底考察ガイド-難治症例とその対策-
国立国際医療研究センター膠原病科医長 山下裕之編著
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総合内科の知識・経験をフルに生かしながら専門性を維持できる膠原病内科
そんな膠原病のスペシャリストを目指す先生方に是非読んで頂きたい1冊!
「膠原病診療ノート第3版」(三森明夫著)とセットで診療に臨めば、膠原病診療に関してはほぼ網羅できると自負しております。
国立国際医療研究センター「皆さまへのお知らせ」にも当センター広報企画室より宣伝されています
初版 まえがき
診療の現場というものは、常に難しい判断を求められ、治療に難渋する事もあり、我々も数々の難治症例を克服してきた。膠原病に関する実用的な症例集や解説書はまだ少なく、当科の過去症例で診断・治療に悩まされたものをピックアップし、それについて解説していく症例集を含んだ膠原病解説書が出来たら、我々のみならず膠原病診療をしなければならない医師達にとってどんなに有用かと考えたことがこの本を作成するに至るきっかけとなった。
発端は、我々とともに当科のレジデント・フェロー達が主体に始めた「難治性膠原病疾患の勉強会」から始まっている。例えば、テーマが「中枢神経ループス」ならそれで難渋した症例集を私が作成して皆でその経験を共有しながら振り返り、症例に関する問題点・疑問点を議論し、「髄液検査」、「MRI検査」、「脊髄炎」、「ステロイドサイコーシスとの鑑別」などテーマを挙げ、2週間後までに各々がその各項目について分担して文献で調べられる限り調べつくし、知識を共有しあった。2週間毎にそのような症例検討、文献考察を繰り返していたら、いつの間にか膨大な資料が出来上がっていた。その中には、膠原病に伴う数多くの呼吸器疾患の画像提示と治療方針を議論したものも含まれていた。これらを世に出さないのは勿体ないと思い、当科に在籍していた元レジデント・フェローの先生方に共同執筆の依頼をかけたところ、全員が快く引き受けてくれて、ついに発刊に至った。
我々は、名著「膠原病診療ノート」の著者である三森明夫先生の門下生でもあり、この本は膠原病ノートの症例集版といった側面もあるが、膠原病診療ノートとは違った視点から我々が独自に知識と今までの経験を総決算して作成した実用書でもある。どの章も力作ばかりであり、編著を担当させてもらっていた私は査読しながら、その力量にただただ感動するばかりであった。協力してくれた先生方に改めて礼を申し上げたい。
膠原病診療に携わる先生方が実臨床で困ったときなどに、痒いところに手が届くよう書かれているこの本を参考にして頂き、少しでも現場でお役に立つことができれば光栄である。
2016年9月3日
国立国際医療研究センター膠原病科医長
山下裕之
推薦文
病棟のスタッフ医師どうしが、科長のイニシアチブと関係なく毎日意見交換し、自発的な勉強会も継続できたら申し分ない。簡単なことではないが、本書の著者達はその理想を実現したようである。当科(国立国際医療研究センター膠原病科)に勤務した時期も異なる謂わば同窓生達が本書を企画し、在籍中と同じ雰囲気で取り組んだのは、編著者、山下裕之医長の情熱によるのであろう。山下先生は当科に入って以来、週2回のカンファレンスごとに入院全例の経過要約と意見方針をパソコン入力し続けた。まもなく4000症例に達するその“キーワード検索機能付き病歴ファイル”に(あるいはその執念に)、周囲が畏敬の念を抱いている。膠原病診療では、疾患の希少性のために対処が個別的になりがちで、工夫したり逡巡したりも多い。実例に密着した討議だけでなく、文献情報も必要である。おもに専門外の医師に資するのがガイドラインの役目だとすれば、専門家が関心をもつのは、実例を巡る考察の詳細であろう。専門家を目指す方々に是非、本書をお勧めしたい。
岩手県立中央病院参与(元 国立国際医療研究センター副院長・膠原病科科長)
三森明夫
予定見出し
1.SLE(ループス腎炎)・・・上田洋(神戸大学医学部附属病院膠原病リウマチ内科)
・ループス腎炎の診断
・ループス腎炎の治療効果判定
・ループス腎炎の治療反応予測
・ループス腎炎の治療(ACR とEULAR ガイドラインを中心に)
・ループス腎炎のその他の治療(カルシニューリン阻害薬治療など)
2.SLE(中枢神経ループス)・・・山下裕之(国立国際医療研究センター膠原病科)
・NPSLEの原因
・NPSLEの分類
・NPSLE診断に対する検査
・NPSLEに関するガイドライン
・SLEに伴う横断性脊髄炎
・SLEに伴う末梢神経障害
・NPSLEと鑑別を要する疾患(CIPDs:ステロイドサイコーシス、NMO、PML、PRES)
3.SLE と血液疾患・・・高橋広行(筑波大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー))
・自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
・自己免疫性血小板減少症(ATP)
・血球貪食症候群(HPS/HLH)
・血栓性血小板減少症性紫斑病(TTP)
・白血球減少症
・AIHA 以外の貧血
4.抗リン脂質抗体症候群・・・波多野裕明(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
・抗リン脂質抗体症候群の診断
・抗リン脂質抗体の種類
・抗リン脂質抗体症候群に対する治療
・劇症型抗リン脂質抗体症候群
5.Sjogren 症候群・・・江里俊樹(東京大学医科学研究所附属病院アレルギー免疫科)
・末梢神経障害総論
・末梢神経障害の分類
・末梢神経障害に対する検査
・末梢神経障害に対する治療
6.筋炎・・・杉森祐介(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
・総論
・特発性炎症性筋疾患の診断
・特発性炎症性筋疾患の治療
・特発性炎症性筋疾患の予後
・各論
・特発性炎症性筋疾患の分類
・特発性炎症性筋疾患の治療
・悪性腫瘍関連筋炎
・DMに伴う皮疹と治療
・CADMに伴う急性進行性IP
・小児の皮膚筋炎
・スタチン筋症・抗HMGCR抗体陽性筋症
7.強皮症・・・土屋遥香(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
・強皮症の皮膚硬化
・強皮症の消化管病変
・強皮症腎クリーゼ
8.血管炎・・・河野正憲(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
・ANCAについて
・2012CHCC 分類
・AAV の治療
・EGPA
・PAN
・皮膚型血管炎
・PACNS
・IgAV
・クリオグロブリン血管炎
・蕁麻疹様血管炎(NUV)
9.Behcet 病・・・尾崎貴士(大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座)
・眼病変以外の主症状の診断と治療
・腸管Behcet病
・神経Behcet病
・血管Behcet病
・Behcet病の眼病変
10.成人Still 病・・・坂内穎(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
・ASDの定義
・ASDの病態・病因
・ASDの診断
・ASDの治療(古典的治療・生物学的製剤・MASへの対処)
11.関節リウマチと呼吸器疾患・・・山下裕之(国立国際医療研究センター膠原病科)
・RA関連肺病変
・薬剤性肺炎
・RA-PCP
・生物製剤やDMARDs使用中の呼吸不全に対する治療ガイドライン
・当科におけるRA合併び漫性肺疾患の鑑別と治療方針
12.膠原病と肺高血圧・・・上田洋(神戸大学医学部附属病院膠原病リウマチ内科)
・肺高血圧の分類及び病態鑑別のための検査
・肺高血圧に対する検査及び診断方法
・CTD-PAH以外の肺高血圧症
・CTD-PAH(SSc、SLE、MCTD、SS、PM/DM)
・肺高血圧の分類
・膠原病に伴う肺高血圧
13.膠原病と妊娠・・・金子駿太(筑波大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー))
・膠原病一般治療薬と妊孕性
・SLEと妊娠
・抗SS-A抗体陽性女性の妊娠(CHBを中心に)
・抗リン脂質抗体症候群と妊娠
・ITP/ATPと妊娠
・妊娠中のRA患者の治療
・ITP と妊娠
14.膠原病疾患に対するFDG-PET/CT の応用・・・山下裕之(国立国際医療研究センター膠原病科)
・RA
・SpA
・PMR
・ASD
・再発性多発軟骨炎(RPC)
・IgG4-RD
・LVV
・GPA(Wegener肉芽腫)
・筋炎
謝辞-初版刊行に当たって-
膠原病はその免疫異常が多臓器に渡って表現される疾患で、診療の現場において他科との連携協力が必須である。この本を発刊するに当たっても各章において各臓器専門家の視点に基づいた御意見を賜る必要性に迫られ、以下の如く、各先生方に御協力頂いた。第1章「ループス腎炎」では腎臓内科医の立場に基づいたご意見に関して三菱京都病院腎臓内科医長の松井敏先生、第4章「抗リン脂質抗体症候群」では全体的な査読を順天堂医院膠原病・リウマチ内科の松木祐子先生、第5章「シェーグレン症候群の末梢神経障害」では神経内科用語などに関して当院神経内科医長の新井憲俊先生、第7章「強皮症」では慢性偽性腸閉塞における在宅中心静脈栄養に対する抗菌薬ロック療法のレジメンに関して当院国際感染症センターの早川佳代子先生、第12章「膠原病疾患における肺高血圧症」では循環器内科の立場に基づいたご意見に関して神戸大学医学部附属病院循環器内科の久松恵理子先生、第13章「関節リウマチに伴う呼吸器疾患」では呼吸器内科的視点に基づいた御意見やCT画像の読影所見などに関して当院呼吸器内科医長の泉信有先生にそれぞれ、ご指導を仰いだ。これらの先生方に厚く御礼申し上げたい。
またに、本書の執筆に当たって日本医事新報社の村上由佳さん、加藤範也さんをはじめ日本医事新報社の方々には企画・編集全般にわたり大変お世話になった。心から感謝申し上げたい。
当科の前科長である三森が経験と文献的考察を癒合させ、現代のリウマチ膠原病診療の真髄を網羅した良書である。
標準的な見解に留まらず、根拠を示したうえで独自の見解がちりばめられている。この見解が正しいかどうかの検証は読者各々で是非行って欲しい。
初版が発行された1999年から約14年を経て、第3版が刊行された。
この間のリウマチ膠原病(特に関節リウマチ)診療の進歩は目覚ましく、多くの疾患で診断基準の改訂が行われ、新薬が上梓された。また従来の薬剤でも使用方法に習熟した結果、予後も著しく改善できるようになった。
この進歩を反映するために大幅な加筆が行われた。約500頁の第2版(増補)が第3版では約600頁にまで増えている。第2版の読者も、この改訂版を購入する意義は大きいであろう。
但し、この本にも記載されてない知識、考え方も数多くある。これを知るためには、様々な症例を一緒に見て、考え、議論をするしかない。若手(でなくても)の医師で志ある者は是非当科の門を叩いて欲しい。1年なら1年なり、2年なら2年なり、5年なら5年なりの経験を蓄積してもらえれば、必ず今後の医師としての能力、さらには人生に大きな影響を及ぼすであろう。
本書は2007年に国立国際医療研究センター内で編集された、内科診療マニュアルが原本にになっている。
このマニュアルは院内の仕事の遂行には便利であったが、他施設の内科医が利用するには、専門的すぎる記述や重要だが抜けている項目も多かった。そこで内科各科に協力して頂き、加筆、修正、編集を繰り返し、どの医療現場で働く内科医でも役立つことを目的に編纂した。
本書の装丁をみれば気付く方も多いと思うが、ワシントンマニュアルが意識されている。これは編者というより、出版社の意気込みの現れである。ワシントンマニュアルよりも日本の実情に合わせた実践的な本にしたつもりである。
しかも、この本はいわゆる”マニュアル”ではない。困ったときにこっそり開いて、答えを得るための忘備録としては向いていない。そのようなマニュアルは既に沢山あるので、改めて当院からマニュアルを出す意義はないと考えた。
私たちはこの本で内科医としての守備範囲を示したつもりである。緊急病態の対処するべき範囲と方法、症候学から診断までの考え方、一般検査の解釈と考え方、コモンディジーズの診断と治療。
是非、この本の守備範囲が当然と考える医師が増えてくれることを願っている。